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Nobuyuki NAGAHAMA
AUGUST 2009
「個別解」に内在する普遍
「免許を取ってからずっと、すこし古いヨーロッパの小型車が好きでした。好きな人には強い個性が感じられ、他の人には普通の実用車にしか見えず、生活に合目的に設計されていて、道具として使い込むのが似合う。過剰な自己主張は無くても、思想を持って作られているように感じます。私の設計もそのようにありたいと願っています。」
「身体的にも、精神的にも、人にやさしいおだやかな家。人を驚かせるためでなく、そこでの暮らしのための家。たしかにそこに建っている、他にはない家。土地の魅力をいかして、せのびをせず、自然体で暮らせる気持ちの良い家を目指しています。」
(長浜信幸建築設計事務所HPより)
建築設計のエッセンスとは何でしょう。
私の仕事のほとんどは個人住宅ですから、先ずそこに住まう方がいらっしゃいます。それから建築には必ず敷地があります。
施主と、敷地と、設計者である私との、ある意味偶然の組み合わせの中から、
最良の結果を導き出す行為がすなわち住宅設計という事なのではないかと思っています。
「鳴岩の山荘」は「自然」と融け合っています。
オーナーは長く大学で教鞭を取っていらした方です。
リタイア後に自分はもちろん家族や友人達が自由に使える、
また、一緒に楽しめる場所を求めておられました。
自然のなかに建物を建てる意味を考え、
建築は森の中にとけ込み、
森は建築の中に取り込まれる空間をイメージしました。
その一方で、たくさんの友人たちにも楽しんでもらえるように、プライバシーの確保や断熱性能、住宅設備など、住宅としての基本性能も備えています。
住宅では味わえない開放性を目指しながらも、
エキセントリックな建築とならないように気を配りました。
「市川の家」では音楽が自然と建築の中で響くようです。
敷地を選んだ理由は後ろに公園の緑が控えていたからだそうです。
この森を見ながら静かに読書を楽しみたいというのが奥様の希望でした。
また、ご主人はホスピタリティにあふれた方で、お客様を手料理でもてなすことも多いそうです。
ダイニングと接する中庭でバーベキューをすることも楽しみの一つです。
静かに読書を楽しむことと、賑やかに食事を楽しむこととを一つの空間で共存させること、
そして、そのどちらからも公園の緑が楽しめること、
それらを成り立たせることがプランニングの上、困難な課題でした。
もう一つ、ご家族共通の楽しみに楽器の演奏があり、そのためのスタジオを半地下に設けています。
これを公園側のリビングの下に配することで、リビングとダイニングとがスキップフロアの構成により緩やかに区別され、
それぞれに理想的なまとまりを得ることに成功しています。
一般に、設計上、困難なこととは何でしょう。
敷地の法的な規制が厳しかったり、予算が厳しかったり、近隣に苦労させられたり、求められる内容が詳細にわたっていてそれを成り立たせることが困難であったり、例を挙げればきりがありません。
すべて住宅の設計は施主とのコミュニケーションの上に成り立っています。
したがって、本音で話し合えない限りは良い住宅には成り得ないと考えます。
設計上、最も面白いと感じることは、どのようなことでしょう。
施主と二人三脚で建築を仕上げていくことが住宅設計の醍醐味だと思います。
ですから、そのコミュニケーションが上手くいった時は気持ちがよいですね。
狭小建築の場合、どのようなことに、工夫されていますか。
設計上の配慮には他の住宅と何ら変わることはありません。
敷地条件の上でも予算の面でも施主の希望が入りきらないことが多いですから、計画内容に納得いただけるまで、いつも以上に打ち合わせに時間をかけることになります。
近い将来、どのような建築を手がけてみたいですか。
個人住宅は全てが個別解としての建築なのだと思っています。
そこに内在されている普遍性が、他の方が住宅を設計する際の参考にしてくれるような設計が出来ればうれしいですね。
建築物をクルマに見立て、「自然体の家」が理想と述べています。
ポルシェやフェラーリ、メルセデスといった、速い車、強そうな車には興味が無くて、普通の人が日常に使う乗用車が好きです。
60〜70年代ではまだまだメーカーごとにお国柄があって、
それは必ずしも日本で乗るのには適していない面もあるのですが、
限られた予算や技術の中での設計の妙やデザインの工夫が垣間見られて乗っていて楽しくなりました。
今は生産や流通の技術が進んだことと、世界中で車を売らなければメーカーが成り立たない事情などから、あまり個性が感じられなくなってきましたね。
「自然体の家」とは、どのような家でしょう。
気取らず、素の自分が快適に暮らせる家です。
どんなに凝った設計をしたとしても、家は住まう人のための空間なのですから、似顔絵のように素直な自分が設計に投影されていることが大事なのだと思います。
建築を知るための入門書をご紹介ください。
『小さな森の家―軽井沢山荘物語』( 吉村順三著)は、いかがでしょう。

